ぐらんぼん

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々3 タイタンの呪い』 リック・リオーダン

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 3 (3)
The Battle of the Labyrinth (Percy Jackson and the Olympians)ギリシア神話が現代のアメリカに甦った、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズ第三巻。
てっきり三部作とばかり思っていたのだが、あとがきによればまだ中盤らしい。いったい何巻まで続くんだ。アメリカでは、第四巻『The Battle of the Labyrinth』が最近出版されており、レビューの評価も上々で期待大。

さて、本書で特筆すべきは、ついにオリンポス十二神が勢ぞろいしたことである。なかでも、狩猟の女神・アルテミスが重要な役どころを演じている。あの飲んだくれの皮肉屋・ミスターD(ディオニュソス)もいい味を出していて、今後も目の離せない存在だ。
今回のミッションは、何者かに囚われたアルテミスを助けにいく、というもの。どうやら、怪物との戦いで行方不明になったアナベスも一緒にいるらしい。パーシーたちハーフ訓練生は、アルテミス配下のハンター隊とともに、救出に向かう。
[ 2008/05/17 ] YA海外 | CM(0) | TB(0)

『ヒトラー・マネー』 ローレンス・マルキン

ヒトラー・マネー
手元の福沢諭吉を、まじまじと見つめる。
光にかざすと、真ん中からもう一人の諭吉が顔を覗かせ、左下では、新たに付け加えられた銀色のシールがNIPPON GINKOを主張している。こんな吹けば飛ぶような紙が、人を一喜一憂させ犯罪にまで走らせるのだから、おかしなものである。
一体ぜんたい、お金とは何だろう?経済学の教科書にはもっともな説明が載っているが要は、ただの紙が人々の「信用」で支えられ、特別な地位を得ているのである。では、この信用とは何だろう?目には見えないが、たしかにある大事なもの。けれど、不断の努力がないとすぐに失われてしまうデリケートなもの。
ナチス・ドイツが第二次大戦中にイギリスに対して仕掛けた偽札攻撃の全貌を描いた本書は、貨幣経済の本質について考えさせてくれる好著である。
[ 2008/05/14 ] 歴史・伝記 | CM(0) | TB(0)

『諸国物語』 ポプラ社篇

諸国物語
ポプラ社創業60周年特別企画として刊行された世界文学アンソロジー。出版社の気合と自負が感じられる重厚な一冊である。
ただ豪華なだけに値も張るので、購入に二の足を踏む人は少なくないのではないだろうか。そこで、『諸国物語』のサイトに載っている特色に沿って、本書を紹介してみようと思う。

1.ラインナップ
やはりアンソロジーで一番気になるのは、誰の、どんな作品が収録されているか、ということである。本書には、19世紀〜20世紀前半に活躍した文豪の中・短篇小説が、21篇収められている。奇怪なものから、恋愛、海洋ロマンに至るまで、さまざまなテイストの物語が楽しめる。全体的に、丁寧な心理描写で心あたたまる作品が多い。
それにしても、どこから見つけてきたのかと思うほどの、有名どころを外した選出である。「知られざる傑作」の謳い文句は、伊達じゃない。「白鯨」のメルヴィルは知っていても、「バートルビー」を読んだ人はあまりいないのではないだろうか?魯迅の「明日」は?全集でしかお目にかかれないような作品や、いまや入手困難のものをこの一冊で読めるのは嬉しい。
とはいえ、いかに傑作といわれても、自分の好みに合わないものもある。つまらなく感じたものほど長い作品なのが辛かった。
[ 2008/05/13 ] その他文学 | CM(0) | TB(0)

光文社古典新訳文庫 創刊1周年プレゼント

古典新訳の発見2
光文社古典新訳文庫創刊1周年プレゼントが届いた。
どうやら抽選に当選したらしい。かなり前のことなので、応募したことすら忘れていた。
文庫本目録のようなものだと思っていたのだが、意外にちゃんとしたつくりでびっくり。
古典新訳文庫と同じ装丁で、一冊の文庫本になっている。
タイトルは、「古典新訳の発見2」
・・・「1」は?

内容は、古典新訳文庫でおなじみの翻訳家のトークセッション・対談や、エッセイ、コラムなど。この別冊では、普段は黒子に徹している翻訳家の方々が主役なのだ。
その中で、金原瑞人さんが『武器よさらば』の「I」の処理について語っているのがおもしろい。従来は「ぼく」だったのを「おれ」と訳したところ、困ったことが。

彼はアメリカ人ですが、キャサリンというイギリス人女性と恋に落ちる。第一次世界大戦中の話ですから、当時のアメリカはある意味で田舎。イギリスは世界に冠たる大帝国です。その大英帝国の女性と恋に落ちた主人公が、「おれ」というだろうか。

結局、キャサリンと話す場面では主語を削ったのだという。ヘミングウェイの文体って簡潔だから、まったく気づかなかった。会話に注目して、もう一度読んでみようかな。

創刊されたときは、光文社古典文学がどうも結びつかなかったのだが、逆にあまりしがらみのない光文社だからこそ、意欲的な新訳に取り組めたのかもしれない。
新しいものがすべて良いとは限らないが、いまの時代に合うような読みやすい訳文にしたことは、大いに評価できる。新訳がきっかけで既存の作品を読みなおし、先人の訳文の素晴らしさを再認識することもできたし。
ただ、読者は気軽に読み比べて楽しめるが、翻訳家が偉大な旧訳から脱却するのは大変なことなんだろう。『眼球譚』から『目玉の話』へ、『星の王子さま』から『ちいさな王子』へ、タイトルにまつわる裏話がおもしろかった。

このシリーズは、翻訳家の熱い思いが伝わってくるのが魅力でもあるので、これからも素晴らしい作品をいろんなアプローチで紹介してほしいものである。アジア文学は魯迅と巴金、タゴールぐらいしか知らないので、この辺りのおもしろい古典を是非。
わたしも微力ながら売り上げに貢献しますので・・・(購入に読書のスピードが追いついていないのだけれど)。ただ悩ましいことに、同じタイトルの作品が本棚を占領して、わたしの収納能力を越えつつある。これで『モンテ・クリスト伯』とか『戦争と平和』とか出たら、どうしよう。でも、買う。

『鼻/外套/査察官』 ニコライ・ワシーリエヴィッチ・ゴーゴリ

鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)
はじめてゴーゴリの「鼻」を読んだとき、「このおっさん、頭がおかしいんじゃないだろうか。」と思った。なんとも下品な表現ではあるが。
なにしろ、朝起きると自分の鼻がなくなっているのである。なんの前触れもなく、いきなり。しかもその鼻が、床屋が食べようとしたパンの中から出てくるのである。それで驚くのは、まだ早い。持ち主から独立した鼻は、立派な制服を着て町をのし歩いているのだから。ここまでくると、想像力の針は一気に振りきれてしまう。
外套・鼻 (岩波文庫)
私が読んだ岩波文庫には、ほかに「外套」という作品も収録されていた。そしてこれもまた、同じように変な物語なのである。
主人公は、しがない小役人。野心はなく、これといった趣味もなく、友だちと羽目を外すこともない。何が楽しくて生きているのか分からないようなこの男が、一大決心をして外套を新調する。ところが、爪に火をともすようにして買った外套を、その日のうちに追い剥ぎに奪われてしまう。
あらすじだけ書くと、男の惨めさが際立ってちっとも作品の良さが伝わらないのだが、これが滅法おもしろいのである。男の外套にかける執念、徐々に生活に張り合いが出てくる過程、仕立てた外套をもったいぶって渡す職人の姿など、真剣な人間の醸し出す滑稽さが、理屈ぬきに楽しい。

『ホーミニ・リッジ学校の奇跡!』 リチャード・ペック

小学生の私にとって大雨洪水警報は、まさに天から降ってくるプレゼントに思えたものだ。
警報が出れば、学校は休みになる。朝起きて外がざあざあ降りになっていようものなら、「今日はイケるんじゃないか」と淡い期待を胸に、登校時間ギリギリまで粘っていた。同じように、風邪が流行って学級閉鎖になったときもはしゃぎ回っていた。
もちろん、子どもたちを学校から解放することが、警報や学級閉鎖の目的ではない。困っている人たちを尻目に、己のちっぽけな喜びに浮かれていたのだから、なんて不謹慎だったのだろう。それでも、学校嫌いの子どもにとってはそこから一時でも逃れられれば、なんだって嬉しいものなのだ。

ホーミニ・リッジ学校の奇跡!
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書評/海外純文学


15歳の少年・ラッセルは、大の学校嫌い。つまらない勉強をさっさとやめて、脱穀の仕事に携わりたいと夢見ている。
夏休みも終わりに近づいたある日、一人しかいない教師が突然この世を去ってしまう。その報せを聞いたラッセルら生徒は、先生の死を悼むどころか、「これで学校が閉鎖される!」と大喜び。ところが、代理教師がやって来て、しかもそれがラッセルの姉だったものだから、一気に奈落の底へ突き落とされてしまう。
[ 2008/05/09 ] YA海外 | CM(0) | TB(0)

『核を売り捌いた男ー死のビジネス帝国を築いたドクター・カーンの真実』 ゴードン・コレーラ

核を売り捌いた男ー死のビジネス帝国を築いたドクター・カーンの真実
世界を股にかけて核関連物資・技術を売り捌いていた男・アブドゥル・カディール・カーン。
数年前、彼が牛耳っていた核兵器市場の実態が暴かれたとき、その闇の深さに驚くとともに、どうやって一介の科学者が強大な権力をもつに至り、何十年にもわたって自由に活動できたのか、不思議に思った。また、私には悪の手先にしかみえない(“博士”という敬称に違和感を覚える)カーンが、祖国・パキスタンでは「核開発の父」とまで呼ばれ、今でも英雄扱いされていることがどうしても理解できなかった。
カーンは一体何を行ったのか? カーンが世界に与えた影響は?彼の動きが封じられた後もなお残された問題とは?本書は、各国政府や関係者の取材をもとに核の闇市場に迫ったドキュメントである。
[ 2008/05/08 ] 社会 | CM(0) | TB(0)