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『絶対安全剃刀』 高野文子

高野文子の初期作品集。
人物の絵柄や線のタッチなどさまざまな作風が混在しているので、雑多な印象を受ける。試行錯誤しながらいまのスタイルを確立していったことが窺える一冊である。
ただ、構図のうまさや斬新な切り口はこの頃から抜きん出ているものの、拙さの感じる作品や私の好みに合わないものもあって、手放しで絶賛する気にはなれない。例えば、若い女性の肩肘張った生き方を描いた「はい―背筋を伸してワタシノバンデス」や、「おすわりあそべ」「うしろあたま」の3篇。複雑で矛盾を抱えた少女の心境をうまく捉えているが、他の少女漫画で読んだような作品に思えて少し物足りなかった。
この作品集の中では、「ふとん」「田辺のつる」「午前10:00の家鴨」「玄関」がよかった。
「ふとん」は、最初の3ページでやられてしまう。うまい。まるで舞台の幕が開いたような始まりである。あとのストーリーもおもしろいが、この描き出しが秀逸である。
「午前10:00の家鴨」が心地よいのは、その適度な距離感である。つかず、離れず。恋人と友だちという関係性の違いはあるとはいえ、『るきさん』のるきさんとえっちゃんの間に漂う空気と似たものがある。この距離感をさらりと描ける作家はなかなかいないと思う。
最後の「玄関」は、『棒がいっぽん』から遡って読んだ私には一番高野文子らしい作品に思えた。シンプルな線で描かれた独特の構図と少女の心情が、すっとストーリーに溶け込んでいて、爽やかな読後感を残す。こういう漫画って、好きだなぁ。
『棒がいっぽん』 高野文子

1コマ1コマを大切にしたくなるような漫画がある。先を急ぐのではなく、立ち止まったり戻ったり、ときには寄り道しながら、ゆっくりゆっくりページをめくることが心地よい漫画がある。
それが高野文子の漫画ではないだろうか。
『棒がいっぽん』には、6つの作品が収められている。
最初の「美しき町」から読み始めて、まず目に留まるのが構図の素晴らしさ。横から斜めから上から、寄ったり引いたりと、さまざまな視点がじつにダイナミックである。なかでも、見開きで描かれた町のパノラマは圧巻だ。これは文章だけではできない、また映像とも違う、漫画ならではの表現だろう。
とはいえ、ストーリーはいたって地味である。とりたてて何かが起こるわけでもなく、あっと驚くラストが待っているわけでもない。淡々とした日常があるだけだ。
「バスで4時に」は、バス発着所から訪問先の家までの、時間軸にすればごくわずかな、ドラマチックでもなんでもない場面を描いている。それなのに、どうしてこんなにおもしろいのだろう。高野文子は、人が普段気にも留めずにそのまま忘れていってしまうような日常を掬い取り、物語に仕上げるのが抜群にうまい。
『もやしもん 4』 石川雅之


冒頭から、『のだめカンタービレ』とコラボっている第4巻である。
そういえば、“のだめカレー事件”なる一コマに、菌がいろいろ出ていたな、と読みながら思い出していた。『のだめ』にはまっていた時は、この漫画を知らなかったから特別意識していなかったが、地味に登場していたのか。
『もやしもん 3』 石川雅之

in OKINAWA

『もやしもん』3巻では、樹教授念願の発酵蔵がついに完成する。自分たちでワインを作れるとは、なんて贅沢。
本書で私が一番ウケたのは、川浜・美里コンビが足踏みでワイン造りをしている場面。パンツまでブドウ色って…。やはり、この二人からは目が離せそうにない。
この漫画に関しては、主人公の幼なじみの結城はどこへ行ったのか、とか、主人公は新入生なのになぜ樹ゼミの一員になっているのか、とか、女性陣はなぜ皆美人なのか(正直、髪形でしか顔の違いを判別できない)とか、どうして都合よくいつものメンバーが沖縄に集まれるのか、とか、この農大生たちはいつ教室で講義を受けているのか、といった疑問を抱くことは不毛である。そもそも、こんなコテコテの農大自体、日本に実在するなら教えてほしいぐらいだ。
いちいちつっこむことなく、菌てんこ盛りの『もやしもん』ワールドをまるごと受け入れる。それが、この漫画を楽しむコツである。

巨匠とマルガリータ
密会
棒がいっぽん
諸国物語
〈眠り病〉は眠らない
アメリカにいる、きみ
ウェン王子とトラ