カテゴリー [ カ行の作家 ]
『新世界より(上・下)』 貴志祐介
『大好きな本 川上弘美書評集』 川上弘美

川上弘美、初の書評集である。
え、まだ本になってなかったんだ。新聞や文庫本の解説など、あちこちで目にしていたから、既に一冊読んだ気になっていた。
本書は二部構成になっており、一部では新聞紙上に書いた書評を、二部では文庫本や全集の解説文を収録している。10年という年月をかけて集められた書評からは、読書のよろこびがたちのぼってくる。
書評本を書評するのは、なんだか妙な気分である。が、拙いなりにも書評(らしきもの)を書いている身だからこそ、他人の書評は気になるものなのだ。
読書メモと違って書評というのは、読み手の存在を強く意識するものだと思う。あらすじや読みどころを書き、自分の感じたことを文章化するのは、思考の整理という目的もあるだろうが、本のおもしろさ(ときには、つまらない本に対する不満も)を誰かに伝えたい、という意思が働くからである。
私はバイリンガルではないが、書評を書くことはある種、翻訳に通じるものがあるのではないだろうか。読書―なかでも小説を読むことは、存外感覚的なものだ。文章の意味や作者の意図を考えるのは後づけの理屈で、まず人は書かれたものをただ感じている。しんと静まりかえった空気を。秘密めいた妖しさを。ごちゃごちゃして何がなんだか分からない感じを。
難しいのが、その感覚を文章に置き換えることである。だから書き手(私なんですが)は、「透明感のある」だの、「静謐な」だの、「重苦しい」といった言葉を使って、どうにかして「本の感じ」を伝えようとするのだ。
『明智左馬助の恋』 加藤廣


信長の遺骸は、一体どこへ消えたのか?
「本能寺の変」を巡る最大の謎を独自の仮説で展開する、三部作の完結篇。今回は、信長を死に追いやった張本人・光秀側から光が当てられている。語り手は、光秀の娘婿・明智左馬助。これまでの登場人物の中では、飛び抜けていい男である。
織田信長、羽柴秀吉、明智光秀。「本能寺の変」に深く関わりのあったこの三人の中で、一番哀れなのが光秀だと思う。
律儀に主人に尽くしたのに、望むようには報われず、天下を正すために決起したのに、長年の友ですら呼びかけに応えてくれず、強大な敵を倒したと思ったのも束の間、別の人間に天下を奪い取られ、後世には「主人殺し」としてその名を語り継がれることになる。
『おやすみ、こわい夢を見ないように』 角田光代

憎悪の行く先

少し前に、人気漫画・『DEATH NOTE』が映画化され話題になったのは、記憶に新しい。そのノートに名前を書かれた者は死ぬ、という死神のノートを巡る人間たちの戦いを描いた物語で、とてもおもしろい。
この漫画を読んだ時、ふと、自分には殺したいほどの人間がいるのか、考えてしまった。他人に対して腹の立つことや、憎しみに近いものを抱くことはある。けれど、「殺したい」かどうか、と突き詰めて考えると、その思いはそれほど強いものではないことに気づく。



巨匠とマルガリータ
密会
棒がいっぽん
諸国物語
〈眠り病〉は眠らない
アメリカにいる、きみ
ウェン王子とトラ