カテゴリー [ サ行の作家 ]
『僕たちのミシシッピ・リバー―季節風*夏』 重松清

「季節風」シリーズの夏篇。
夏を描いた短篇といえば、「サマーキャンプへようこそ」(『日曜日の夕刊』所収)が真っ先に思い浮かぶ。私の一番好きな作品で、読み返すたびに笑ってしまう傑作だ。ほんとうに、情けない父親(だけど子ども思い)を書かせたら日本一の作家だと思う。
そんな「サマーキャンプ〜」の印象が強烈だったので、楽しく明るい短篇集を期待して読み始めたのだが、意外としんみりした作品が多くて驚いた。
本書で色濃く影を落とすのは、「死」と「別れ」である。悲しい中にも、ひと筋の光が投げかけられており、読後、心にあたたかいものが広がっていく。開放的で爽やかな夏のイメージが一変するような、重松流・夏の12の物語。
『ツバメ記念日―季節風*春』 重松清

春という季節からは、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。
芽吹き、桜、出会いと別れ、巣立ち、新出発・・・。他にもいろいろあるだろうが、そんな春の風景を一冊に閉じ込めたのが、本書である。これと似た短篇集でいえば、『卒業』だろう。
『ツバメ記念日―季節風 春』は、産経新聞に連載されていたものを書籍化したもの。今後3ヵ月ごとに、夏、秋、冬と、続々刊行される予定だという。重松清の描く日本の歳時記、といったところだろうか。
重松清の短篇を読んでうまいなぁと感じるのが、書き出しの一文である。例えば最初の「めぐりびな」は、こんな文章で始まる。
簡潔な文章なのに、荷物が部屋を占領する場面や語り手の困惑した心境が手に取るように分かる。ちなみに、母親にこの一文だけを読んで聞かせたところ、「ご愁傷様」という言葉が返ってきた。七段飾りのひな人形を贈られた。
必要なことをきちんと伝える文章は、作文のお手本のようだ。その後に続く物語にすっと入り込めるのは、この書き出しの力が大きいと思う。ただこの作品、嫁と姑の確執を描くのかと思いきや、意外にも物語は語り手の女性の過去へと遡ってゆき・・・。




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