ぐらんぼん

乱読・積読・併読の本の虫による書評。

『僕たちのミシシッピ・リバー―季節風*夏』 重松清

僕たちのミシシッピ・リバー―季節風*夏
「季節風」シリーズの夏篇。
夏を描いた短篇といえば、「サマーキャンプへようこそ」『日曜日の夕刊』所収)が真っ先に思い浮かぶ。私の一番好きな作品で、読み返すたびに笑ってしまう傑作だ。ほんとうに、情けない父親(だけど子ども思い)を書かせたら日本一の作家だと思う。
そんな「サマーキャンプ〜」の印象が強烈だったので、楽しく明るい短篇集を期待して読み始めたのだが、意外としんみりした作品が多くて驚いた。
本書で色濃く影を落とすのは、「死」と「別れ」である。悲しい中にも、ひと筋の光が投げかけられており、読後、心にあたたかいものが広がっていく。開放的で爽やかな夏のイメージが一変するような、重松流・夏の12の物語。
[ 2008/07/17 ] サ行の作家 | CM(2) | TB(1)

『ツバメ記念日―季節風*春』 重松清

ツバメ記念日―季節風*春
春という季節からは、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。
芽吹き、桜、出会いと別れ、巣立ち、新出発・・・。他にもいろいろあるだろうが、そんな春の風景を一冊に閉じ込めたのが、本書である。これと似た短篇集でいえば、『卒業』だろう。
『ツバメ記念日―季節風 春』は、産経新聞に連載されていたものを書籍化したもの。今後3ヵ月ごとに、夏、秋、冬と、続々刊行される予定だという。重松清の描く日本の歳時記、といったところだろうか。

重松清の短篇を読んでうまいなぁと感じるのが、書き出しの一文である。例えば最初の「めぐりびな」は、こんな文章で始まる。

七段飾りのひな人形を贈られた。

簡潔な文章なのに、荷物が部屋を占領する場面や語り手の困惑した心境が手に取るように分かる。ちなみに、母親にこの一文だけを読んで聞かせたところ、「ご愁傷様」という言葉が返ってきた。
必要なことをきちんと伝える文章は、作文のお手本のようだ。その後に続く物語にすっと入り込めるのは、この書き出しの力が大きいと思う。ただこの作品、嫁と姑の確執を描くのかと思いきや、意外にも物語は語り手の女性の過去へと遡ってゆき・・・。
[ 2008/05/20 ] サ行の作家 | CM(4) | TB(2)

『ハーケンと夏みかん』 椎名誠

ハーケンと夏みかん (集英社文庫)
『くだものだもの』というアンソロジーの中で強烈に印象に残ったのが、椎名誠さんの「ハーケンと夏みかん」だった。
いつか元本を読みたいと思っていたところ、古本屋で見つけたので購入。私が買ったのは山と渓谷社から出版されたハードカバーだが、集英社文庫としても出ているので、そちらの方がリーズナブルである。
[ 2008/03/24 ] サ行の作家 | CM(0) | TB(0)

『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』 重松清

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢
自慢ではないが、私はゲームに疎い人間である。
退屈を紛らわせるため機内に備え付けのゲームをしていたら、隣の人に「コントローラー、逆さまですよ」と言われるぐらい、致命的に疎いのだ。もちろん、いまどんなゲームが流行っているかなんて知るはずもない。
そんな私でも、RPGが何の略でどんなものかという知識ぐらいは持ちあわせている。それでも、ひとつのゲームを作るために、キャラクターの性格から趣味嗜好、バックボーンに至るまで細かく設定するものだとは知らなかった。
[ 2008/03/15 ] サ行の作家 | CM(0) | TB(0)

『世界を創った男チンギス・ハン1 絶対現在』 堺屋太一

世界を創った男 チンギス・ハン 1
★★★★☆

誰でもそうなのかもしれないが、私は本を読む時、はしがきとあとがき(学術書であれば目次も)は、特にじっくり読むようにしている。著者の意図や、これから展開される本の内容がよく分かるからだ。
さて、本書は、巻末にある「全体解説―『世界を創った男 チンギス・ハン』の作意」から先に目を通すことをお薦めしたい。
なぜ、いまチンギス・ハンなのか?堺屋太一さんの執筆意図が、ここに詳しい。チンギス・ハンを、残忍な征服者と見るか、それとも、「グローバル(全地球的)」な発想の体現者と見るか。この視点の違いで、同じ人物でも評価がガラリと変わってしまう。
[ 2007/10/25 ] サ行の作家 | CM(0) | TB(0)