ぐらんぼん

乱読・積読・併読の本の虫による書評。

『僕僕先生』 仁木英之

僕僕先生
こんな師弟関係、ありかも ★★★☆☆

かわいい表紙である。
タイトルの意味が分からなくても、作者の名前を聞いたことがなくても、この表紙を見るだけで手に取ってしまうのだから、装丁とは実に購入動機のウェイトを占めるものだ。物語は、表紙のイラストどおりの内容である。終始ほんわかした雰囲気の漂うゆるゆる系(こんな言葉があるのかは知らないが)ファンタジー小説だ。同じくファンタジーノベル大賞を受賞した『しゃばけ』シリーズが好きな人は、楽しめるだろう。
[ 2007/05/26 ] ナ行の作家 | CM(0) | TB(1)

『ラストワンマイル』 楡周平

痛快・経済小説 ★★★☆☆

ついに、わが家に大画面薄型テレビがやって来た。
地上デジタル放送対応で、専用のボタンを押すと、その放送局が提供する付随した情報を見ることができる。今はまだ、ニュースや天気といった乏しい内容だが、将来的には、ドラマの登場人物が身につけている服やアクセサリーを購入し、クイズ番組に参加することなどを楽しめるという。まさに、インターネットの得意とする双方向通信が可能となるのだ。
新しいおもちゃを手に入れた子どものようにリモコンを操っていると、本書で描かれた世界がすぐそこに来ていることを実感する。

物語は、民営化された郵政に大口顧客であるコンビニでの宅配便扱いを奪われ、ネット上でショッピングモールを運営するIT企業からは大幅な値下げを要求された大手運輸会社が、会社存続をかけて新しいビジネスモデルを構築し、起死回生の一手に打って出る、というもの。

作者は、言葉だけが独り歩きしていた感のある「放送と通信の融合」を、具体的に絵に描いてみせる。煩雑な著作権処理のリスクを覚悟の上で、なぜ皆がこのスローガンの元に引き寄せられていくのか。そこで得られる果実の大きさを知っているからだ。
この作品では、話題の「コンテンツ・ビジネス」の舞台裏を臨場感豊かに描いており、経済に興味がない人でも楽しく読み進めることができる。

なんといっても、登場する男たちが格好良いのだ。
未知の分野に打って出る運輸会社の社員たちや、既成勢力の壁に阻まれながら新しいシステムを作り上げようとするIT企業の社長、「禿鷹ファンド」と揶揄されるしたたかな外資系ファンドなど、異業種との競争にさらされるビジネスの世界で生き抜く男たちが、生き生きと描かれている。
簡単に事が運んでいくストーリー展開はやはり小説だが、ピンチをチャンスに変えていくたくましさには学ぶところが多い。
正直、『再生巨流』よりは落ちるし、何度も読み返したいとは思わないが、気楽に読めてスカッとしたい人にはおすすめの一冊である。

ラスト ワン マイル
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書評/経済・金融

[ 2006/12/08 ] ナ行の作家 | CM(0) | TB(0)