ぐらんぼん

乱読・積読・併読の本の虫による書評。

『赤い糸の電話』 立原えりか

赤い糸の電話
本書には、11篇の物語が収められている。
立原えりかさんの作品は、優しさの中に現実の痛みが潜んでいることは、前のレビューで触れた。ここには、昔助けられた恩を忘れなかった動物と人との交流を描いた「ねこのおんがえし」「一月のウグイス」といった心あたたまる物語もあるが、全体的に切なくて毒のあるものの方が多い。
[ 2008/04/04 ] YA国内 | CM(4) | TB(0)

『ほんものの魔法』 立原えりか

ほんものの魔法
ブックオフへ行くと、たまに掘り出しもの(あくまで私にとっての)に出あえるのが嬉しい。100円コーナーの棚にあった本書を見つけて、速攻でレジへ持っていった。
立原えりかさんの作品は、とにかく絶版が多いのだ。子どもの頃読んだあの物語をもう一度…と思っても、いま手に入れるのが難しい。

本書は、青土社から刊行された「立原えりかのファンタジーランド 全16巻」の15巻目にあたる。収録作品は、以下の9篇。

町のあかり
生姜入りパンを焼く日
優しい幕間
十万粒のなみだ
夜の舟のり
ほんものの魔法
南の海のものがたり
飾り窓
愛の誓い

[ 2008/03/11 ] YA国内 | CM(2) | TB(0)

『小学五年生』 重松清

小学五年生
★★★☆☆

少年は、小学五年生だった。

こんなプロローグで始まる17の物語。主人公はすべて、小学五年生の男の子。40代の中年男性と10歳前後の少年を主人公にした小説は、重松清さんの十八番といえるだろう。

大人になると、年齢が離れていてもそれほど気にならないのに、十代の時は、学年が一年違うだけで大きな差があったものだ。
重松さんは、小学四年生でも六年生でもなく、なぜ五年生を主人公にしたのだろうか。
私の記憶を辿ってみても、クラスの雰囲気が微妙に変化したのは、この頃だったと思う。これまで一緒に遊んでいた男子と女子が距離を取るようになり、中学受験を決めた子は塾に通い始める。少しずつ、「高学年」としての自覚も芽生えてくる。子どもに見られたくないけれど、大人になる余裕もない。そんなジレンマを抱え始める時期が、小学五年生なのかもしれない。
[ 2007/10/20 ] YA国内 | CM(0) | TB(0)

『ウラナリ、さよなら』 板橋雅弘

ウラナリ、さよなら
★★★☆☆

ウラナリシリーズ最終巻。
このシリーズを最初に読んだときは、こんな結末になるとは思いもしなかった。青春全開のヤングアダルト小説、と感じていたのだから。
前作と同じく本書でも、第一章で結末が明かされる。だから、予想外の展開に驚くことはなく、ハヤブサとサクラの高校一年生の秋から冬にかけての日々をしみじみと振り返っていく。これで二人を見るのはもう最後なんだな、と思うと感慨深いものがある。
[ 2007/10/12 ] YA国内 | CM(0) | TB(0)

『獣の奏者(闘蛇編・王獣編)』 上橋菜穂子

獣の奏者 I 闘蛇編獣の奏者 II 王獣編
★★★★☆

上橋菜穂子さんの作品は、「孤高」という言葉がよく似合う。
『精霊の守り人』の女用心棒・バルサ然り、『狐笛のかなた』の霊狐・野火然り、彼らは他人と分かち合うことのできないものを背負いながら、一人生きる。他人と群れず、自らの使命を果たすその姿は、気高く美しい。「孤独」だと湿っぽいが、「孤高」には全てを引き受ける強さがある。

ここにも、孤高の少女が一人。
10歳の少女・エリンが暮らすリョザ神王国は、「王獣」に乗って降臨し神の名の元に国を治める王一族と、戦闘用の獣・「闘蛇」を操って国防一切を司る大公一族から成り立っている。大公は王の臣下でありながら、実質的に権力を握る存在。神王と大公の関係は、天皇と武士のそれに近い。
育てていた闘蛇を死なせた咎で母が処刑されてしまい、孤児となったエリンは、養蜂を生業とするジョウンに助けられ、一緒に暮らすことに。そこで野生の王獣を見たことがきっかけで、王獣の医術師となるべく王獣保護場の学舎で学び始める。ある日、怪我をした幼獣が学舎に運び込まれ、エリンが世話を任される。試行錯誤しながら飼育していく内に、エリンは王獣と闘蛇に隠された秘密に気づき、否応なく王国の政治に巻き込まれていくことになる。
[ 2007/10/10 ] YA国内 | CM(4) | TB(3)