カテゴリー [ ヤ・ワ行の作家 ]
『のぼうの城』 和田竜

売れている、らしい。
ちなみに直木賞候補作である(伊坂幸太郎が辞退して話題になっている、あの)。
店頭でカバーを見たとき、「おぉ〜、ついに歴史小説にもラノベの風が!」と思ったのだが、存外普通の歴史小説だった。戦国時代はもともと弱いので、忍城攻防戦も、城代・成田長親の存在も知らなかった。
舞台は、現在の埼玉県行田市に位置する武州忍城。
豊臣秀吉の大軍(総大将は石田光成)に包囲され、家臣の意見が降伏に傾く中、「のぼう様」の愛称で領民に親しまれる長親は戦うことを決意。愚鈍で「でくのぼう」と思われていたこの男が、大谷吉継をして「この城、敵に廻したは間違いか」と後悔させるほどの徹底した籠城戦を繰り広げるのである。
二万三千の軍勢を迎え撃つ忍城軍は、たったの五百。圧倒的な兵力の差をいかにして耐え、勝利にもっていったのか。酒見賢一の『墨攻』を彷彿とさせる攻防戦の様子を、痛快に描き出した物語だ。
『白河夜船』 吉本ばなな

読書というのは、つくづく個人的なものだと思う。
そして本を読む「わたし」自身も、刻々と変化しており、置かれた状況や、精神状態、経験などによって、同じ本を読んでもひとつとして同じものはない。傑作に思えた作品が、しばらくして再読すると凡庸なものに感じてしまうことなど、ざらである。けれど、それがまた面白い。
本書を久しぶりに読み返してみた。
吉本ばななの作品は、心底疲れたときによく効く。風邪をひいたら薬を飲むのと同じように、心がぼろぼろで、どうしようもなく疲れてしまったら、彼女の本を開くといい。
彼女の作品はだいたい好きだが、この『白河夜船』は、格別の思い入れのある一冊である。それは、本書の主人公と同じで、私も死んだように眠り続けていたからである。当時の私は精神的にかなりまいっていて、昼と夜の区別なく、いつ眠りについたか分からないくらい、夢と現のはざまを彷徨っていた。このままではいけない。理性はか細い声でそう訴えるのだが、身体は頑として従おうとしない。ようやく目覚めると自己嫌悪に陥る。その繰り返しだった。
そんな状態の中で読んだ本書に、正直私は救われた。「眠る」という行為に、罪悪感を抱かなくなったのだ。休んでいいのだ、と思えた。そして、どんなに情けない自分でもありのままに受け入れられるようになった。ほんの小さな変化だが、そのとき心のベクトルが確かに変わったのだ。




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