ぐらんぼん

乱読・積読・併読の本の虫による書評。

『リンさんの小さな子』 フィリップ・クローデル

リンさんの小さな子
喪失と再生の物語 ★★★★☆

リンさんは、祖国の戦乱から逃れてきた老人だ。
腕には、生後6週間の孫娘をしっかりと抱いている。愛する故郷と家族を失った彼にとっては、孫のサン・ディウの存在だけが、生きる支えとなっている。
難民として暮らす異国の地で、リンさんはバルクと名乗る男と出会う。バルクもまた、妻を亡くし、過去に自分が犯した行為に人知れず苦しんでいた。
心に深い傷を抱えた二人の男が出会い、言葉が通じなくとも、心を通い合わせる。
[ 2007/02/03 ] フランス文学 | CM(0) | TB(0)

『女帝 わが名は則天武后』 シャン・サ

女帝 わが名は則天武后
歴史とは誰が決めるのか ★★★★☆

本書は、中国唐王朝3代皇帝・高宗の皇后であり、後に周王朝を築き、中国初の女帝となった則天武后の生涯を描いた物語である。

則天武后には、とかく悪い評価がつきまとう。
元は高宗の父である太宗の後宮に入ったのに、その息子と不義を働き妻の座を得た、皇后を追い落とすために我が子を殺して罪をなすりつけた、反抗的な息子を辺境の地へ追いやり、政治の実権を握った、情け容赦ない拷問を加えて敵を一掃した・・・等々。そこには、「目的のためなら手段を選ばない、残虐非道な悪女」の姿が浮かび上がってくる。
周王朝自体、わずか10年ほどの短命な王朝だったため、貞元の治の太宗や開元の治の玄宗などの有名な唐の皇帝の間に挟まれて、存在感も薄い。つまり、周王朝の政治および則天武后の実像については、分からないことが多いのだ。
[ 2006/11/24 ] フランス文学 | CM(0) | TB(0)