ぐらんぼん

乱読・積読・併読の本の虫による書評。

『ウェン王子とトラ』 チェン・ジャンホン

ウェン王子とトラ
ウェン王子とトラ

★★★★★

すごい。
鳥肌が立つほど、圧倒された。
こんな陳腐な表現しかできないのがもどかしいが、この絵本を前にしては言葉を失う。

我が子を人間に殺された一頭の母トラがいた。
トラは、憎しみのあまり人々を襲うようになった。トラの怒りを鎮める手だてはただひとつ。幼い王子を差し出すことだった。森に置き去りにされた王子を見つけたトラは…。

ありふれたタイトルにさほど期待せず読み始めたのだが、大迫力の絵と母子の強い愛情に、深く感動させられた。コマ割の構図も効果的なのか、絵本を読んでいるというより、一大巨編映画を観ているような感覚に陥る。シンプルな文章が、余計に想像力を掻き立て、物語の幅を広げるのだ。
最近しかけ絵本が人気だが、水墨画の手法で見開きいっぱいに描かれたトラは、今にもページから飛び出してきそうな勢い。これは、大型絵本ならではの迫力だろう。
悲しみと怒りで我を忘れたトラだが、母親としての優しさを失ってはいなかった。物語の中で、トラは二度、大粒の涙を流す。それぞれの涙に込められたトラの愛情を思うと、ぎゅっと胸が締めつけられる。

作者は、中国生まれでパリ在住の画家・絵本作家。本書は2005年にドイツ児童図書賞を受賞している。
中国、フランス、ドイツ、そして日本。国や文化を越えて人々の心に訴えかける力が、この絵本にはある。何度も読み返したくなる傑作である。王子が大きく目を見ひらいたシーンが、忘れられない。
[ 2007/10/02 ] 絵本 | CM(0) | TB(0)
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