『アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書』 山岡道男・淺野忠克

今でも、ネズミ講やマルチ商法に引っかかる学生が後を絶たないと聞く。
ちょっと考えれば落とし穴に気づくはずなのに、なぜ誘惑に乗ってしまうのか。騙す側の巧妙な手口をかわすのはやっかいではあるが、パーソナルファイナンスを身につけていれば、少なくとも簡単に騙されることはないだろう。
パーソナルファイナンスとは、「消費者教育」「個人資金管理」のこと。日本ではあまり耳慣れない言葉だが、アメリカではこのパーソナルファイナンスを若いうちから学ばせる動きが広がっている。90年代、カード破産者の増加を背景に、NCEE(アメリカ経済教育協議会)は、国民への経済教育に力を入れ始めたのだ。
本書は、NCEEが策定した経済教育のフレームワークを基に作られた高校生向けの教科書を、日本の実情に合うように置き換えたものである。高校生向けのテキストを底本にしているので、とても分かりやすい。しかも、経済学の基本はきちんと押さえてある。
アメリカ人といえば、消費と投資でお金をバンバン使う豪快なイメージが強いが、意外なことに、今のアメリカでは貯蓄を重視する流れが強まっているのだという。
ここで注意したいのが、本書はパーソナルファイナンスに重きを置いた経済学教科書ということである。需要と供給や、金利や物価の動きなど、経済学の基本概念を学んだ上で、それが自分にどう関係するか、どのように対応すれば賢明か、と消費者の視点から考えるのがパーソナルファイナンスなのだ。
これは、家のローンを組んだり、保険に加入したり、資産運用を考えたりする時など、生活のあらゆる場面で役に立つ。日夜ニュースから流れてくる為替レートや株価の無味乾燥な数字も、意味のあるものとして捉えられるだろう。
日本でも、証券会社などが若者向けのマネー教育を積極的に推進しているが、こういった実用的な経済教育は専門分野に進む者だけでなく、国民ひとりひとりに必須の学問だと思う。携帯電話をかざすだけでモノが買える時代だから、なおさら。
もちろん、ケインズの名前や概念を暗記することも大事だが、それを実生活に活かすことができていないのが現状ではないだろうか。私個人でいえば、高校の政治経済の授業は、どこか自分とは遠い世界の話に思えたものだ。
自己破産まで教えるアメリカの教育姿勢には戸惑いを覚えるが、早いうちから「自己責任」の原則を学ぶことは、ひいては自分の身を守る。本書は、「賢い消費者」となるために読んでおきたい一冊である。
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