『赤い指』 東野圭吾

親子の問題

最近、幼い子どもを狙った痛ましい事件が後を絶たない。
被害に遭われた家族の心痛は、到底想像できるものではない。犯罪は、いつでもどこでも誰の身にも突然降りかかってくる。家族が犯罪に巻き込まれることを考えただけでゾッとしてしまう。
では反対に、家族の誰かが加害者になる場合を想像できるだろうか。誰かの幸せを奪ってしまう者になることに。
本書は、家族の一人が犯した幼女殺害の隠蔽を図ろうとする、ある一家を描いた小説である。
ここでは、老人介護問題、ひきこもり、家庭内暴力といった問題が扱われる。これらの問題は、何も本書の家族に限った特殊事例ではない。今もどこかの「家庭」という密室の中で、そこに暮らす者たちを苦しめているのだ。人ごととは思えない怖さが、この作品にはある。
家族を守るためとはいいながら、その実、自分の保身を考えているにすぎないエゴイスティックを、作者は描きたかったのだろう。
けれど、設定は異なるとはいえ、私には『レイクサイド』の焼き直しのようにしか思えなかった。
タイトルの「赤い指」が事件解決の鍵となるのだが、加賀恭一郎刑事の推理が冴える訳でもなく、ミステリーとしては弱い。
また、赤い指に親の愛情を語らせようとするのにも無理がある。結局、家族の全員が、辛い現実から目を背けて逃げていただけではないのか。
伝えたいことは分かるが、この作品にしかない、というオリジナリティーは感じられない作品だ。
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